伊東昭義と出会ったのは、沖縄の海をテーマにした『伊東昭義巡回展』の初日に祝辞を述べた時だった。今から25年も前のことである。
彼の作品に感銘を受けた私は、それ以来、自称「伊東昭義応援団長」を名乗り、米国立『スミソニアン』での個展への道筋を立てることにした。その後、伊東のスタッフが持ち込んだ作品は、スミソニアン内外15人の有識者による厳正な審議と予算委員会の決定により正式に招聘されることになったのである。
主催となったインターナショナル ギャラリーのエレン・ニクソン・ドーン館長は 「個展開催が決定したのは伊東の芸術的評価は勿論のこと決定的となったのは伊東の人間性であった」とのことである。折り返し、未だ会ってもない伊東の人間性がどうして解るのか?・・・と尋ねたところ、それは「詩を読めば解る」(作品集の中に詩が記載されていた)であった。
その後、フランス文化省に招かれ、国立『ポルトドレ宮殿・ギャラリー』での個展開催時には、マスメディアから「伊東は、深淵なる海中世界を光輝なる芸術に昇華させた先駆者である>と評された。
イタリアの国立『アリナリ写真美術館』展(フィレンツェ)では、3大全国紙の一面を飾り論評された。初日の招待日には、限定の招待客以外に、新聞の効果であろうか、フィレンツェの市民約400名が押しかけ、パーティ会場と展覧会場は人で埋めつくされた。伊東はその隙間を縫って挨拶をしたらしい。
なお、作品及び資料が永久保存されることになったとのことである。やがて『ユネスコ』ーパリ本部一(国連・教育・科学・文化機関)に招聘され個展を開催した伊東は国際的に高い評価を受けることになった。
開催前に、伊東の作品は通常の写真ではなくアートであるがそれでも良いのか?・・・と尋ねたところ、それに対する答えは「芸術でなければ真に訴える力がない」であったそうだ。
開催後には、伊東の芸術の持つ力が全ての催しと人々を一つにまとめることになったと、ユネスコから絶賛され、また、パリのユネスコ日本政府代表部や日本ユネスコ国内委員会の人々は口を揃えて「日本人の誇りですね」と言えたと言う。
これら、伊東昭義が輝かしい実績を築き上げることができたのは、スミソニアンでの個展が後の国際的評価に繋がったのであろうことを私は大変嬉しく思っている。勿論、そこには伊東の世界観である、生命の源である海と、そこに生き続ける多種多様な生きものたちへの限りない愛と情熱と、自然そのものに対する畏敬の念が込められた伊東芸術が存在していたからである。