358 | Elegance
355 | Silent Sea
354 | Alert Color
353 | Sleeping Grass
352 | Out of Curiosity
350 | Seabed Desert
343 | Awakening
Beauty is order, it is love, it is the universe.
美の原光景

美術家  伊東 昭義

 水面から海底に目を移すと、そこは、煌めく魚たちが優雅に泳ぐサンゴ礁と言う名の楽園だった。その美しい光景に反して圧倒されたのは、命の《ざわめき》や《おののき》や《ものものしさ》と言った深遠な感覚だった。

 それは、あらゆる雑念から解き放されられた時の感覚でもあった。さらに、海面が巨大なレンズとなり、太陽が水面まで引き寄せられて宇宙を身近に感じさせ壮大な感覚が加わった。

 それら海底で感じた得体の知れない感覚は、実は、万物が発する波動というエネルギーだったのだ。この世に存在する全てのものは量子状態にあり、魚たちやサンゴや岩や海水などと共に、太古から蓄積されたエネルギーが加わったた膨大な波動だったのだ。

 生命の原形が海中に出揃ったカンブリア紀を経て、人の意識は遥か宇宙の誕生へと一気に遡って行った。壮大な海中に身を置くことにより従来の芸術概念は一掃され、新しい概念が構築された。

 それは、言わば科学を造形化し彩色して、命の全てを作品に封じ込めることになったのである。作品に『癒しとパワー』が同居していると言われることの所以でもある。

 宇宙の誕生は絶対値であり美なのだ。その美とは秩序あり知性であり愛だったのだ。

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